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経営支援雑談

どうなる?コンサル業界

こんにちは。山口県防府市の公認会計士・税理士事務所 ソルト総合会計事務所の松田です。今回は弊社を含め経営の支援を事業とするすべての方に関係する重要な法改正がありましたのでご紹介します。ニッチかつ専門的な内容になっていますが、ぜひ最後までお付き合いください!

【行政書士法改正の概要】
2025年6月6日に衆議院で可決された行政書士法改正案は、行政書士の業務範囲をより明確化し、時代のニーズに合わせた新たな業務への対応を可能にすることを目的としています。特に、行政不服申立て代理権の拡大が大きな柱の一つです。また、これまでの業務範囲における実態と法規の整合性を図り、業務制限の明確化も進められる見込みです。この改正は、行政書士の専門性を高め、国民の利便性向上に寄与することが期待されています。

この法改正は、行政書士の業務範囲や役割に大きな変化をもたらすものとして注目されていますが、実は経営コンサルタントにとっても無関係ではありません。

今回のブログでは、この行政書士法改正が経営コンサルタントにどのような影響を与える可能性があるのか、そして今後どのような視点を持つべきかについて考察していきます。


今回の行政書士法改正のポイント(経営コンサルタント関連)

今回の改正で、特に経営コンサルタントが注目すべきは以下の点です。

  • 行政不服申立て代理権の拡大
    行政書士が、行政庁への不服申立て手続きにおいて、依頼者を代理できる範囲が拡大される可能性があります。これは、企業が行政庁との間で生じる紛争解決において、行政書士の関与が増えることを意味し、法務コンサルティングに近い領域で活動する経営コンサルタントとの連携や棲み分けが重要になるでしょう。

  • 業務制限の明確化
    これまで実務上で判断が分かれていた業務領域について、行政書士の業務として明確に定義されることで、他士業との業務範囲がより明確になる可能性があります。これにより、経営コンサルタントが提供するサービス領域との境界線がよりはっきりするかもしれません。

  • 事業承継・M&A、経営改善支援における今後の可能性
    現時点の改正案で、行政書士の業務範囲に事業承継やM&A、経営改善支援に関する「コンサルティング業務」が直接的に明記されているわけではありません。しかし、行政書士が官公署への提出書類作成や法務DDの一部に関与する実務はこれまでもあり、今後、これらの分野における行政書士の専門性や役割が、法改正とは別の形で強化される可能性も考えられます。その場合、経営コンサルタントは、行政書士との連携やそれぞれの専門性の再定義がより一層求められることになるでしょう。

  • 補助金申請業務への影響
    経営コンサルタントの方の中には、企業の補助金申請支援を主要な業務の一つとされている方も少なくないでしょう。補助金申請書類の作成や提出代行は、これまでも行政書士の従来の業務範囲に含まれています。今回の改正でその点が明文化されたわけではありませんが、今後、行政書士による補助金申請業務の専門性や広報が強化されることで、経営コンサルタントとの競合意識が高まる可能性はあります。経営コンサルタントは、単なる申請代行に留まらず、補助金を活用した「事業成長戦略」の策定や、申請後の事業実行支援といった、より付加価値の高いサービス提供で差別化を図る必要があります。

経営コンサルタントへの影響:脅威か、それとも機会か?

では、これらの改正や今後の可能性が経営コンサルタントに具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。

1. 競合の激化と棲み分けの必要性

行政不服申立て代理権の拡大や、将来的な他分野への関与拡大によっては、一部の業務領域で競合が激化する可能性があります。特に、法務関連の知識を強みとする行政書士は、行政手続きや関連書類作成といった領域において、より専門性を発揮しやすくなるでしょう。

また、補助金申請業務においても、行政書士が書類作成の専門家として、より前面に出てくる可能性があります。これに対し、経営コンサルタントは、補助金申請「後」の事業計画の実行支援や、補助金を活用した「事業成長戦略」の策定といった、単なる申請代行に留まらない付加価値を提供することで、差別化を図る必要があります。

2. 協業の可能性と新たなビジネスモデルの創出

一方で、この改正は協業の大きな機会でもあります。行政書士と経営コンサルタントが連携することで、顧客に対してより多角的で質の高いサービスを提供できるようになります。

例えば、事業承継案件において、行政書士が法務面でのサポートを行い、経営コンサルタントが事業戦略や組織体制の再構築を支援するといった連携が考えられます。また、補助金申請においては、行政書士が申請書類作成・提出代行の専門家として、経営コンサルタントが補助金を活用した事業計画の立案やその後の実行支援の専門家として、それぞれの強みを活かした協業が可能です。これにより、顧客は「ワンストップ」で幅広い課題解決のサポートを受けられるようになり、双方にとって新たなビジネスモデルを創出するきっかけとなるでしょう。

3. 専門性と付加価値の再定義

行政書士の業務範囲の明確化や拡大の可能性は、経営コンサルタントが自身の「専門性」と「提供する付加価値」を改めて問い直す良い機会となります。

  • より高次の戦略策定能力
    表面的な法務手続きや書類作成だけでなく、企業の将来を見据えた事業戦略やビジョン策定といった、より高次のコンサルティング能力が求められます。
  • 実行支援と成果へのコミットメント
    計画を立てるだけでなく、その実行を支援し、具体的な成果に結びつけるための伴走型支援の重要性が増すでしょう。補助金申請においても、単に採択されるだけでなく、その補助金を使ってどのように事業を成長させるか、という視点でのコンサルティングが重要になります。
  • 多様な専門家との連携力
    行政書士だけでなく、税理士、弁護士、社会保険労務士など、多様な専門家と連携し、顧客の複雑な課題を包括的に解決する能力が、今後の経営コンサルタントに不可欠となります。

まとめ:変化を成長の機会に

今回の行政書士法改正は、経営コンサルタント業界に一定の変化をもたらすことは間違いありません。特に、行政不服申立て代理権の拡大や、補助金申請業務における行政書士の専門性強化の可能性は、今後の経営コンサルティング業務のあり方を考える上で重要な要素となります。

しかし、この変化を単なる脅威と捉えるのではなく、自身の専門性を再確認し、新たな協業の可能性を探り、より高付加価値なサービスを提供するための「成長の機会」と捉えることが重要です。

今後、行政書士との連携を強化し、それぞれの専門性を尊重しつつ、顧客にとって最適なソリューションを提供できる経営コンサルタントが、より一層求められる時代になるでしょう。


免責事項: 本記事は、2025年6月6日に衆議院で可決された行政書士法改正案に関する現時点での情報に基づいた一般的な考察であり、今後の法案の成立状況や詳細な内容によって、解釈や影響が変わる可能性があります。

コラム作成者紹介

ソルト総合会計事務所 スタッフ
中小企業診断士/税務会計支援 松田 尚

豊富な専門知識と経験で経営者を支えます
学生時代は個性的な友人に恵まれ楽しく過ごす。中学では卓球部で部長を務め、人の気持ちを理解し行動することの難しさを学んだ。大学では恩師の師事により、自分で考え行動し、自分らしい人生を歩むことの大切さを感じた。証券会社時代では礼儀を叩き込まれ、所作一つまでよく考えて行動することの大切さを学び、政治や経済のニュースでも表面上のことだけではなく、その要点などを理解し考えることができるようになった。

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