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役員貸付金のデメリットと解消法

あなたの会社には、役員貸付金はありませんか?

役員貸付金とは「会社」が「役員」にお金を貸している状態を言います。
役員目線で言えば、会社からお金を借りている状態であり、本来であれば、将来的に会社に返済する必要があります。
特に中小企業のオーナー経営者は、株主であり、かつ代表取締役であることが多いです。そのため、簡単にお金を一時的に借りてしまうことがありますが、ここには大きなデメリットが潜んでいます。

役員貸付金のデメリット①「銀行の融資査定上、マイナス評価となる。」

最大のデメリットは、金融機関からの評価が下がる点です。
役員貸付金により、運転資金や設備資金が借りずらくなる可能性があります。
銀行は、①返済能力に加えて、②資金使途も重視しています。

もし、多額の役員貸付金がある場合、銀行は「この会社に融資をしても役員のプライベート資金として使われるのでは?」という疑念を持たれることになります。
継続的に銀行から融資を受ける必要がある場合、役員貸付金を減らしていくように心がけましょう。

役員貸付金のデメリット②「役員貸付金ではなく、役員賞与として扱われる可能性がある。」

会社から役員に貸し付けた役員貸付金が長期間返済の目処もなく残っている場合は、税務調査で役員貸付金として認められない可能性があります。
その場合は、役員賞与として扱われることになり、税負担が増えるデメリットがあります。
役員賞与として取り扱われた場合、

・所得税が増える
・住民税が増える
・社会保険料が増える

ことになります。
特に所得税は、累進課税により税率が最高45%まで上がってしまうため、多額の役員貸付金が役員賞与として扱われることは避けたいところです。

役員貸付金のデメリット③「受取利息により、法人税が増える。」

会社から役員にお金を貸す場合は、原則、適正な利息を設定しなければなりません。
これを認定利息と呼びます。
会社目線で言えば、利息は利益として計上されることになり、その分だけ法人税等の負担が大きくなります。

役員貸付金を解消する方法

デメリットだらけの役員貸付金が貸借対照表に載っている場合には、役員貸付金の解消に努めていくことが必要です。

解消法①役員報酬の一部を貸付金の返済にあてる。

役員報酬の毎月支給を受ける金額の中から、役員貸付金の返済を控除して、定期的に返済していく方法です。
役員の手取りは減ることになります。
もし、手取額を減らしたくない場合、役員報酬の増額を検討します。
ただし、いつでも増額して良いわけではありません。
役員報酬の金額を変更するには、事業年度の開始の日から3ヶ月間の間で役員報酬を改訂するようにします。
また、役員報酬を増額する場合、法人税は減りますが、個人負担の所得税、社会保険料、住民税は増えることになります。

解消法②役員借入金と相殺する

「社長」が「会社」にお金を貸している場合、すなわち役員借入金がある場合には、会社から受ける返済額と役員貸付金を相殺することで、役員貸付金を解消することができます。

解消法③社長個人の資産を会社に売却する。

お金で返済できない場合、社長個人の資産を会社に売却し、役員貸付金を解消します。
例えば、自動車、土地、建物などです。
売却代金は、適正価格である必要がありますので注意しましょう。
もし、社長個人について売却益が生じた場合は、譲渡所得として所得税の確定申告が必要になります。

解消法③役員退職金を返済にあてる。

社長の退職金を役員貸付金の返済にあてる方法です。
退職金は所得税の負担が小さくてすみます。
退職所得控除額が控除され、さらに控除の金額の2分の1相当額に対して所得税を計算するためです。
役員退職金が過大な場合、税務上損金として認められないリスクもあるので注意しましょう。

まとめ

役員に金銭を貸し付ける場合、契約書等の整備も重要です。
例えば、
・株主総会、取締役会の議事録
・金銭消費貸借契約書の締結
・適正な利息

が必要になります。

もし、会社と役員で金銭消費貸借契約書を締結していなかった場合などは、税務調査で役員賞与とみなされる可能性があるので注意しましょう。
現在、役員貸付金が累積しているのであれば、解消に向けて、税理士に相談してみることをおススメします!

コラム監修者紹介

ソルト総合会計事務所 所長
公認会計士・税理士 山本 将之

EY新日本有限責任監査法人、株式会社YKプランニングを経て、2015年に山口県防府市にてソルト総合会計事務所(山本将之公認会計士・税理士事務所)を開業。「スピードと情熱」「積極的な提案」を大切にし、中小企業の経営支援・課題解決に組織的に取り組んでいる。

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