中小企業のための退職金制度:従業員の定着と節税を両立!

こんにちは!山口県防府市の税理士・公認会計士事務所 ソルト総合会計事務所で中小企業診断士をしています松田です!
今回は顧問先様からもご相談の多い、従業員のための退職金制度についてお伝えしたいと思います。
「従業員に長く働いてもらいたいけれど、退職金制度って複雑そう…」
「なるべく税負担を抑えたいけど、どんな選択肢があるの?」
中小企業の経営者様の中には、このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。従業員にとって退職金は、将来の生活を支える大切な資産であり、企業にとっては優秀な人材の確保や定着に欠かせない制度です。
この記事では、中小企業が導入しやすい退職金制度の種類とそのメリット・デメリット、そして節税対策についても詳しく解説します。
なぜ今、中小企業に退職金制度が必要なのか?
「退職金制度は大手企業のもの」と思っていませんか?しかし、現代において中小企業にとっても退職金制度の導入は非常に重要です。
* 従業員のモチベーション向上と定着率アップ: 退職金制度があることで、従業員は安心して長期的なキャリアプランを描きやすくなります。将来の不安が軽減されることで、仕事へのモチベーションも向上し、離職率の低下にもつながります。
* 優秀な人材の確保: 採用競争が激化する中で、退職金制度は他社との差別化を図る強力なツールとなります。福利厚生が充実している企業は、求職者にとって魅力的に映り、優秀な人材を獲得しやすくなります。
* 企業の信頼性向上: 退職金制度の導入は、従業員を大切にする企業姿勢を示すことになり、社内外からの信頼性向上にも貢献します。
中小企業向けの主な退職金制度の種類
中小企業が導入を検討できる退職金制度には、主に以下の種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った制度を選びましょう。
1. 中小企業退職金共済(中退共)
中小企業向けの代表的な退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。
メリット
* 国の制度なので安心: 確実に退職金が支払われます。
* 掛金の一部を国が助成: 新規加入や掛金増額時に助成があります。
* 掛金は全額損金算入可能: 法人税の節税になります。
* 手続きが比較的簡単: 導入・運用の手間が少ないです。
* 掛金が少額から設定可能: 月額5,000円から始められます。
デメリット
* 支給額が掛金と運用益に依存: 自社で運用できないため、大幅な増加は見込みにくいです。
* 途中解約時の減額リスク: 短期間で退職した場合、元本割れすることがあります。
2. 確定拠出年金(DC)
「日本版401k」とも呼ばれ、従業員が自ら年金資産を運用する制度です。企業が掛金を拠出し、従業員が金融商品を選んで運用します。
メリット
* 掛金は全額損金算入可能: 企業側の税負担を軽減できます。
* 従業員が運用益を非課税で受け取れる: 従業員側の税制優遇が大きいです。
* 退職所得控除の対象: 退職金として受け取る際に税制優遇があります。
* 導入後の事務負担が比較的少ない: 運用は従業員自身が行うため、企業側の手間が軽減されます。
デメリット
* 運用リスクは従業員負担: 運用状況によっては元本割れのリスクがあります。
* 従業員への金融知識の啓蒙が必要: 従業員が適切な運用を行うためのサポートが求められます。
3. 確定給付企業年金(DB)
企業があらかじめ定めた給付額を保証する年金制度です。
メリット
* 従業員は安定した給付を受け取れる: 運用リスクは企業が負うため、従業員は安心して退職後を迎えられます。
* 人材の確保・定着に効果的: 従業員にとって魅力的な福利厚生となります。
デメリット
* 運用リスクは企業負担: 運用状況によっては追加拠出が必要になる場合があります。
* 導入・運用の手間やコストが高い: 専門家への依頼が必要になるケースが多いです。
* 掛金は損金算入可能ですが、積立不足に注意: 積立不足が生じると、将来の負担が増加する可能性があります。
4. 特定退職金共済(はぐくみ基金)
比較的新しい退職金制度で、中小企業を中心に普及している共済制度です。確定給付型でありながら、企業にとっては中退共と同様の損金算入メリットがあります。
メリット
* 企業拠出の掛金は全額損金算入可能: 法人税の節税効果があります。
* 従業員の掛金拠出も可能(マッチング拠出): 従業員も税制優遇を受けながら資産形成ができます。
* 中途退職者への給付も柔軟に対応: 退職理由に関わらず、積立金に応じた給付が可能です。
* 運用の専門家がいるため、企業側の負担が少ない: 外部委託のため、企業は運用に直接関与しません。
デメリット
* 運営主体によって制度内容が異なる場合がある: 加入前に詳細を確認する必要があります。
* 全国的な知名度が中退共ほど高くない: 制度内容の理解に時間がかかる場合があります。
5. 個人型確定拠出年金(iDeCo / イデコ)
企業が退職金制度を持たない場合や、従業員が自身の退職金準備を強化したい場合に利用できる、個人が任意で加入する年金制度です。企業が関与する制度ではありませんが、退職金制度の選択肢を考える上で触れておく価値があります。
メリット
* 掛金が全額所得控除の対象: 所得税・住民税が軽減されます。
* 運用益が非課税: 運用で得た利益に税金がかかりません。
* 受取時も退職所得控除または公的年金等控除の対象: 税制優遇があります。
* 転職・離職しても資産を持ち運び可能(ポータビリティ): 柔軟な資産形成が可能です。
デメリット
* 原則60歳まで引き出せない: 途中解約ができません。
* 運用リスクは個人が負う: 運用状況によっては元本割れのリスクがあります。
* 手数料がかかる: 口座管理手数料などが発生します。
【企業としてiDeCoをサポートするには】
企業型DCを導入できない場合でも、企業がiDeCoの加入促進を行うことで、従業員の福利厚生を間接的に支援できます。従業員のiDeCo拠出金を企業が給与から天引きする「iDeCo+(イデコプラス)」制度を活用すれば、企業側の事務負担は増えますが、従業員の利便性は向上します。
6. 退職金規程による積立(社内積立)
社内で退職金を積み立てていく方法です。
メリット
* 柔軟な設計が可能: 自社の状況に合わせて自由に制度を設計できます。
* 外部費用がかからない: 外部機関を通さないため、手数料などがかかりません。
デメリット
* 損金算入が難しい場合がある: 内部留保のため、税務上の恩恵が少ない場合があります。
* 資金繰りへの影響: 退職金発生時にまとまった資金が必要になります。
* 倒産時の保全性がない: 企業が倒産した場合、退職金が支払われないリスクがあります。
退職金制度導入における節税ポイント
退職金制度を導入する際には、税務上のメリットを最大限に活用することが重要です。
* 掛金の損金算入: 中退共や確定拠出年金(DC)、確定給付企業年金(DB)、はぐくみ基金の掛金は、原則として全額損金算入が可能です。これにより、企業の法人税負担を軽減できます。
* 従業員の税制優遇: 退職金として受け取る場合、退職所得控除という大きな控除が適用されます。これにより、給与所得と比較して大幅に税負担が軽減されます。また、確定拠出年金(DC)やiDeCoにおいては、運用益が非課税となるメリットもあります。

当事務所ができること
退職金制度は、企業の規模や経営状況、従業員の構成などによって最適な選択肢が異なります。当会計事務所では、お客様の状況を詳しくヒアリングし、以下のサポートを提供いたします。
* 現状分析と最適な制度の提案: お客様の現状を把握し、複数ある退職金制度の中から最適なものをご提案します。
* 導入手続きのサポート: 複雑な手続きも、当事務所が丁寧にサポートいたします。
* 税務上のメリット最大化のアドバイス: 節税効果を最大限に引き出すための具体的なアドバイスを行います。
* 導入後の運用サポート: 導入後の疑問や不安にも、継続的に対応いたします。
退職金制度は、従業員のモチベーション向上、優秀な人材の確保、そして企業の節税対策にもつながる重要な経営戦略の一つです。
「どの制度を選べば良いかわからない」「手続きが面倒そう」とお考えの経営者様、ぜひ一度、当会計事務所にご相談ください。お客様の会社の未来のために、最適な退職金制度の導入をサポートさせていただきます。

コラム作成者紹介
ソルト総合会計事務所 スタッフ
中小企業診断士/税務会計支援 松田 尚
豊富な専門知識と経験で経営者を支えます
学生時代は個性的な友人に恵まれ楽しく過ごす。中学では卓球部で部長を務め、人の気持ちを理解し行動することの難しさを学んだ。大学では恩師の師事により、自分で考え行動し、自分らしい人生を歩むことの大切さを感じた。証券会社時代では礼儀を叩き込まれ、所作一つまでよく考えて行動することの大切さを学び、政治や経済のニュースでも表面上のことだけではなく、その要点などを理解し考えることができるようになった。