【ドトールVSコメダ】上場企業から学ぶ!!事業戦略【前編】
こんにちは!
4月よりソルト総合会計事務所に入社しました松田尚(たかし)です。
今後、「中小企業診断士×証券アナリスト」という異色の経歴を生かして、皆様に興味を持っていただけるような情報を発信していければと思いますので、末永くよろしくお願いします!!
さて、早速ですが、皆さんは行きつけのカフェってありますか?
スタバみたいな大手チェーンや何十年も続く老舗、お洒落な流行りお店などいろいろありますね。
私は勉強したり読書するのに、スタバやコメダによく行きます。
実は、これらの大手カフェチェーンは、定番商品が違うだけでなく経営の方針にも大きな違いがあるのです!
今回は、ドトールコーヒーとコメダ珈琲を会計事務所らしく、“数字”で比べて、そこから見てくる違いを解説してみたいと思います。
(上場企業で財務情報を公開していて比べやすいのがこの2社でした。。。)
ドトールコーヒー
まずは、ドトールコーヒーです。『ドトール・日レスホールディングス』の傘下の会社です。
2024年2月期の決算補足資料によると、
店舗数は1,273店、うちフランチャイズ(以下FC)が862店です。
(以下、エクセルシオールカフェ等の他ブランドも含めた数字で話を進めます。)
※ドトールコーヒーだけの店舗数でいうと、1,063店です。
ざっと、3分の2がFCで残りが直営店といったところでしょうか。 財務を見てみましょう。
売上高は840億円(正確には84,119百万円)
売上から原価等を引いた売上総利益(粗利益)は415億円(41,639百万円)
粗利率は49%(49.5%)ということで、語弊を恐れずに言うと500円のコーヒーだと255円が原価ということですね。
さらに、人件費(14,268百万円)やその他(23,866百万円)の販売管理費(販管費)が380億円(38,135百万円)です。(“その他”は広告費とかですかね。)
すると、営業利益は35億円(3,503百万円)になり、営業利益率は4%(4.2%)ということなので、500円のコーヒー1杯売ると20円の利益が出るということです。
まとめると、500円のコーヒーで内訳を考えると
原 価:255円
販管費:225円
利 益: 20円
という構造になっているんですね~
参照:株式会社ドトール・日レスホールディングス|開示ライブラリー (dnh.co.jp)
コメダ珈琲
次は、コメダ珈琲を見ていきましょう。
2024年2月期の決算短信によると、
店舗数は1004店舗で、ドトールコーヒー(※1,063店)と同じくらいあるんですね~
直営店数はたったの39店舗です。そう、ほとんどがFCなんです!
さっそくドトールコーヒーとの違いが見えてきました。 財務分析に移っていきましょう。
売上高は420億円(正確には42,236百万円)
売上から原価等を引いた売上総利益(粗利益)は145億円(14,605百万円)
ドトールと同じく500円のコーヒーで考えてみると、330円が原価ということになります。
次に、営業利益がどうなっているというと、販管費が60億円(6,012百万円)でその他諸々があり、85億円(8,717百万円)です。380億円のうち85億円が利益ということですね。
よって、500円のコーヒーで考えると、約110円が利益になっています。
まとめると、500円のコーヒーの内訳は
原 価:330円
販管費: 60円
利 益;110円
ということですね。
参照:決算説明資料 | 株式会社コメダホールディングス (komeda-holdings.co.jp)
比較
前置きが長くなりましたが、ここからが本題の比較です!
上に書いた内容の要点を比較しやすいように表にまとめてみました。
出典:著者作成
上から見ていくと、『売上』はドトールコーヒーがコメダ珈琲の2倍近くになっています。
次に『粗利』、こちらは売上比でみると、前者の49.5%に対して、後者は33.8%となっており、ドトールコーヒーの方が粗利率も優れています。
そして、『販管費等』『営業利益』を合わせて見ると、『営業利益率』はドトールコーヒーが4.2%、コメダ珈琲が20,2%ということで、コメダ珈琲が優れています。
この記事で見ていきたいのは、どちらの会社が優れているかということではなく、特徴の違いなので、さらに分析を進めていきましょう。
『粗利』というは、“売上から仕入原価を差し引いた額”ということです。“仕入原価”をおおざっぱに、“売上に伴って発生する費用”と言い換えてみたいと思います(専門用語では変動費といいます)。コーヒーで言えばコーヒー豆みたいなものです。たとえば今の倍のコーヒーを販売したら、今の倍のコーヒー豆が必要になるというイメージですね。
次に『販管費等』。これは変動費に対して固定費と言い換えてみます。つまり、人件費やテナント料みたいな“売上に関係なく発生する費用”です。
つまり、『ドトールコーヒーはコメダ珈琲に比べて、売上に対して変動費が少なく、固定費が多い』といえます。
なので、ドトールコーヒーの特徴を荒っぽくいうと、『たくさん売上を出せばそれだけ儲かりやすい』ということです。
当たり前のように聞こえますが、裏返すと、『売上が落ちると赤字になりやすい』ということでもあります。
これに対してコメダ珈琲の特徴は、『売上に左右されず安定的に利益が出しやすい』ということです。 例を出すために、仮に固定費が変わらず、両者の売上が倍になった時と半分になった時の2パターンを見てみましょう。
【パターン①:売上倍】
出典:著者作成
ご覧の通り、売上が2倍になると、ドトールコーヒーの『営業利益』はコメダ珈琲の倍近くになり、差が開いていた営業利益率もほぼ同じになりました。
【パターン②:売上半分】
出典:著者作成
次に売上が半分になった場合はどうでしょうか。
ドトールコーヒーは大幅な赤字になっている一方で、コメダ珈琲は黒字を維持しています。
以上が財務面から見たドトールコーヒーとコメダ珈琲の違いになります。
この数年のコロナ禍では、コメダ珈琲のようなタイプが有利だったように見えますね。
どちらのタイプが良いかは、それぞれ一長一短あり、時代と共に変わってきます。
皆様の事業はドトールコーヒータイプでしょうか?それともコメダ珈琲タイプでしょう?
次回は、これらを踏まえて、実際にどのような事業展開がされており、どんな事業計画を立てているのかを見ていきたいと思います。
最後に、ここまで読んでいただきありがとうございました。 これからも皆様のビジネスのヒントになる情報を定期的に紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします!
コラム作成者紹介
ソルト総合会計事務所 スタッフ
中小企業診断士/税務会計支援 松田 尚
豊富な専門知識と経験で経営者を支えます
学生時代は個性的な友人に恵まれ楽しく過ごす。中学では卓球部で部長を務め、人の気持ちを理解し行動することの難しさを学んだ。大学では恩師の師事により、自分で考え行動し、自分らしい人生を歩むことの大切さを感じた。証券会社時代では礼儀を叩き込まれ、所作一つまでよく考えて行動することの大切さを学び、政治や経済のニュースでも表面上のことだけではなく、その要点などを理解し考えることができるようになった。